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パック STRIKE OF NEOSまで1600枚以上収録。未収録多数 ■各パックのオススメカード ■カード内容の書き込み用テンプレ ■レアの判断基準(5枚中一番右のカード) ウルトラレア:光沢があり輝いている スーパーレア:輝いている レア:光沢がある バーチャルサーチはこの3種で行われる。シークレット等は関係がない。 ■各パックの収集率が80%を超えると、カードリストに追加される。(禁止カードパックのみで入手できるカードを除き、パスワードで入手できるようになる) 番号 価格 パック名 出現条件 P01 150P 白き龍の伝説 初めから出現 P02 150P 強大な封印の力 初めから出現 P03 150P 定められた混沌 初めから出現 P04 150P 黒き闇の魔導師 初めから出現 P05 150P 真紅に燃える業火 初めから出現 P06 150P 雷鳴の召喚者 初めから出現 P07 150P 究極の力 初めから出現 P08 150P ヒーローの条件 初めから出現 P09 150P 黒き混沌の使者 初めから出現 P10 150P トゥーン・リベンジ 初めから出現 P11 150P 解き放たれたマシン 初めから出現 P12 150P 電脳再起動 初めから出現 P13 150P 悠久なる師弟 初めから出現 P14 150P 勝利への渇望 初めから出現 P15 150P 禍々しき魔物 初めから出現 P16 150P 巨竜との戦 初めから出現 P17 150P 墓守の宿命 初めから出現 P18 150P 結束した力 初めから出現 P19 150P 魔術と剣術の競演 初めから出現 P20 150P 天からの使者 初めから出現 P21 150P 王者の住まう神殿 フリーデュエルLv1で全キャラに3勝 P22 150P 光より生まれる破壊者 フリーデュエルLv1で全キャラに4勝 P23 150P 大邪神の怒り フリーデュエルLv2を出現 P24 150P 破壊と再生の導き フリーデュエルLv2で全キャラに3勝 P25 150P 闇を打ち砕く光 フリーデュエルLv3を出現 P26 150P 深遠なる闇 フリーデュエルLv3で全キャラに4勝 P27 150P 暗黒界からの侵略 フリーデュエルLv4を出現 P28 150P 地獄よりのしもべ フリーデュエルLv4で全キャラに5勝 P29 150P 運命と血と フリーデュエルLv5を出現 P30 150P せめぎあう光と闇 フリーデュエルLv5で全キャラに6勝 P31 150P 闇属性パック1 初めから出現 P32 200P 闇属性パック2 LPサバイバル3連勝 P33 250P 闇属性パック3 制限デュエルLv5を出現 P34 300P 闇属性パック4 テーマデュエルLv5を出現 P35 200P 炎属性パック テーマデュエルLv3を出現 P36 200P 光属性パック1 制限デュエルLv3を出現 P37 250P 光属性パック2 テーマデュエルLv4を出現 P38 200P 水属性パック1 制限デュエルLv2を出現 P39 250P 水属性パック2 制限デュエルLv5を出現 P40 150P 地属性パック1 LPサバイバル3連勝 P41 200P 地属性パック2 制限デュエルLv2を出現 P42 250P 地属性パック3 制限デュエルLv4を出現 P43 300P 地属性パック4 テーマデュエルLv4を出現 P44 250P 風属性パック テーマデュエルLv2を出現 P45 250P アンデット族パック LPサバイバル無制限で10連勝 P46 250P ドラゴン族パック テーマデュエルLv3を出現 P47 200P 悪魔族パック1 制限デュエルLv3を出現 P48 250P 悪魔族パック2 テーマデュエルLv4を出現 P49 200P 機械族パック1 制限デュエルLv4を出現 P50 250P 機械族パック2 テーマデュエルLv5を出現 P51 200P 恐竜族パック 制限デュエルLv6を出現 P52 250P 獣族パック 制限デュエルLv5を出現 P53 250P 水族パック 制限デュエルLv4を出現 P54 200P 戦士族パック1 LPサバイバル6連勝 P55 250P 戦士族パック2 テーマデュエルLv3を出現 P56 300P 戦士族パック3 LPサバイバル6連勝 P57 250P 天使族パック 制限デュエルLv6を出現 P58 200P 魔法使い族パック1 制限デュエルLv3を出現 P59 250P 魔法使い族パック2 LPサバイバル無制限で15連勝 P60 3000P 禁止カードパック 全体モード達成率95%、テーマS45個 P61 150P 全ノーマルモンスターパック 全体モード達成率50%、テーマS10個 P62 150P 全効果モンスターパック 全体モード達成率80%、テーマS25個 P63 150P 全融合モンスターパック 全体モード達成率70%、テーマS20個 P64 150P 全儀式モンスターパック 全体モード達成率60%、テーマS15個 P65 150P 全罠パック 全体モード達成率85%、テーマS30個 P66 150P 全魔法パック 全体モード達成率90%、テーマS35個 P67 150P 全カードランダム 全体モード達成率95%、テーマS40個 xxx xxxP 初期デッキ&強化法 ヒント xxx xxxP 特別&クリア後に入手 特殊手段 xxx xxxP 融合素材代用法 参考資料 xxx xxxP パックページ用コピーテンプレ 編集→コピー
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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (18)操舵 「ウルザ!ミスタ・ウルザ!返事をして!目を開けて!ねぇ…っ!」 ブリッジに、警告アラートとウェザーライトⅡの船体が軋む音が猛り轟く。 一瞬にして八隻のアルビオン戦艦を沈め、二匹のイゼット・ドラゴンを葬った飛翔艦が、浮遊力を失ったことで地上へ向けて落下を始める。 「いけません!皆さん何処か手近なものにしっかり掴まってください!」 艦橋を襲う強烈な揺れと浮遊感。直後に叫んだコルベールの警告。 艦の平衡が失われて前傾し、艦橋内では固定されていなかったものが前方へと滑り落ちた。 言ったコルベール自身、そしてウルザ、ウルザに寄り添っていたルイズもまた床を滑り落ち、艦橋前方の壁へと叩きつけられた。 ウルザが意識を失うと同時に動力源であるエンジンからの供給が止まり、全てのシステムが遮断されたのである。 それらの停止した機能の中には当然、飛翔機能や力場発生機能も含まれている。 今や飛翔艦ウェザーライトⅡは空に浮かぶ巨大な棺桶と化し、地面へ向けて猛スピードで滑り落ちているのだった。 伝説のアーティフィクサー・ウルザ。 彼が設計し様々な処置を施されたウェザーライトⅡ、その性能はあらゆる面でハルケギニアに存在するどんなフネをも凌駕する。 だが、それでも天高くからの地表へ叩きつけられれば、何重にも『固定化』を施された船体とて無事で済むという保証はない。 何よりも、船体が無事であったとしても慣性を殺す『反射』が作用しなければ落下の衝撃で中の人間は挽肉になってしまうだろう。 「ぐ、ぐぐ……操縦が手動になっているのか」 この船をウルザと共同で製作したコルベールには、現状をある程度把握することが可能であった。 動力とコントロールを一人で担っていたウルザが敵から何らかの攻撃を受け、艦の操作を彼自身で行うのが困難となった。 そのため彼は意識を失う直前に制御権を手放し、艦を手動操作に切り替えたのだ。 結果操縦者を失ってしまったウェザーライトは、その制御を失い落下しているのだった。 コルベールの頭脳はこれらを整理し、現状を打破する方策をすぐさま導き出した。 そう、ことは単純である。 手動で制御してやればいいだけなのである。 前のめりに傾いだウェザーライトⅡの艦橋内、その床は三十度ほども傾斜している。 その傾斜の落ち止まりに位置するコルベールが、艦橋前部中央に位置する操縦席にたどり着くのは難しい。 コルベールは今このとき操縦席に座っている彼。必死にしがみついている彼に、全てを託す他に自分達が助かる道は無いと判断した。 「ミスタ・グラモン……ギーシュ・ド・グラモン!」 恐れで瞳をしっかりと閉じ、必死に床に据えつけられたコンソールに掴まっていたギーシュ。 コルベールは、彼に全ての命運を預けたのだった。 ギーシュ・ド・グラモン。 彼は本来この場所に立っているはずの無い人間である。 ウルザやルイズ、コルベールやオスマン、彼らのように覚悟や意気込みを持ってこの船に乗ったわけではない。 彼がこの船に乗ったのは事故、あるいは手違いによるものである。 突然戦場に放り出され、恐怖を感じなかった訳ではない。だが、圧倒的なウェザーライトⅡの性能は彼が今立っているここが、戦場であるという現実を忘れさせた。 そうして無邪気に興奮していたギーシュ。 彼は今ここに至ってやっと自分が戦争に巻き込まれたことを実感したのである。 繰り返し言おう、彼には覚悟も無ければ気概も持ち合わせていない。 そんな彼に、コルベールは全てを託す決心をしたのだった。 名を呼ばれ、恐る恐る目を開けるギーシュ。 彼はこれが悪い夢であり、目を開ければ全てがうたかたとなって消え去り、新しい朝が始まることを祈ってゆっくりと瞼を開いた。 しかし、彼の目の前に広がっていたものは横で吐息をたてるモンモランシーでも、自分のために朝食を用意してくれるモンモランシーの後姿でも、頬を朱に染めて目覚めのキスの余韻に浸るモンモランシーの愛らしい顔でもなかった。 そこに広がっていたのは、現実。 至る所で赤いライトが点滅し、アラートが鳴り響く、激しく傾き少しでも体勢を変えようとすると重力に引かれずり落ちてしまいそうになる、前方には一面に広がる草原、これが現実。 途端に恐怖で涙が溢れる。 そんなギーシュに、コルベールは更なる現実を突きつける。 「ミスタ・グラモン!君がしがみついているそれは、操舵装置だ!」 「は、はひ?」 恐怖のあまり泣き笑いのように引きつった顔のギーシュ。 「どうか、落ち着いて欲しい。この船は地面へと墜落しようとしている、それを回避する為には誰かが操縦し落下を食い止めるしかない。ここまでは分かるかい?」 「み、みしゅたこるべぇる……いったひ、なにを……」 涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃになった教え子の顔、それを見ながらもコルベールは冷静に続ける。 「今、この艦内で、操縦を行えるのは君しかいない。君が操縦し、この船の体勢を立て直すしか、我々が助かる道は無い」 きっぱりと言い切ったコルベール。 これで混乱したギーシュの頭も、ようやっと自分がやらねば全員が死ぬということを理解した。 だが、頭で理解することと心から湧き上がる感情は全く別である。 「で、でも、ぼかぁ……ぼかぁ……」 コルベールからはっきりと口にされた「死」の予兆。 それがギーシュの心を鎖となって縛り付けた。 「できませぇぇん!ぼくにはムリです!」 半泣きから全泣きで訴えるギーシュに、外野からの飛ぶ応援。 「やるんだ!ミスタ・グラモン!君にしか出来ないことなんだ!」 ギーシュを見据えたコルベールの叫び。 「やりなさいギーシュ!勇気を出して!」 倒れたウルザのしわがれた手を握ったルイズの叫び。 「やれ!貴族のぼんぼん!このままじゃ全員おっ死んじまうぞ!」 ウルザの横に転がるデルフリンガーの叫び。 「やるんじゃギーシュ君!今こそグラモン家の意地を見せるのじゃ!」 床を滑り落ちそうな体を、両手で椅子に縋り付いて必死に耐えているオールド・オスマンの叫び。 「やって……」 この期に及んでも慌てずに、しっかりと椅子に掴まって体を固定しているタバサの一言。 そして最後に、 ぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ 艦橋後方に位置したトイレの扉の奥から響く、モンモランシーの叫び。 「も、モンモランシーーーーーー!!??」 首どころか体ごと向けるようにして背後を見やるギーシュ。 扉の向こうから愛するモンモランシーの助けを求める小さな叫びが、彼の耳に届いた。 ギーシュの頭を重量級のハンマーで頭を殴り飛ばされたような衝撃が走る。 モンモランシー! モンモランシー! モンモランシー! モンモランシー! モンモランシー! モンモンモンモンモン……モンモランシー! 今、彼の頭の思考スイッチが片っ端から下ろされる。ギアは瞬時にトップ、全ての障害/恐怖は脳髄の隅へと追放される。 彼の頭に血がめぐり、その頭脳が高速回転を始める。 どうすれば格好いいか、どうすれば女性に慕われるか、何がギーシュ・ド・グラモンらしいのか! そうして遂に帰ってきた。気障で格好つけで女性に優しい、普段のギーシュが帰ってきたのである。 「分かりましたミスタ・コルベール!指示を、指示をお願いします!」 涙と鼻水と涎と汗と、それらが交じり合った汁でぐちゃぐちゃになった顔のまま、ギーシュ・ド・グラモンが絶叫した。 艦首を上げ、翼を広げて制動体勢に入るウェザーライトⅡ。 艦尾付近の飛翔翼がぼんやりと輝く。これは船が飛翔機能を取り戻したことを表していた。 しかし、既に地面までの距離は二千メイル。 自由落下の速度を殺しきれず、ウェザーライトⅡは今、正に硬い地面へと叩きつけられようとしていた。 「ハンドルを引きながら、足元の両ペダルを強く踏むんだ!」 「や、やっていますううううううう!!!」 顔を茹蛸のように真っ赤に染めながら叫ぶギーシュ。 その手には丸いハンドルが握られており、細い足は力いっぱい足元のペダルを踏み込んでいる。 コルベールの指示通りに操作を行ったギーシュは艦の飛翔機構の回復を成功させていた。 その際に再起動したのは強大な魔力を動力源とするスランエンジンではなく、船倉内部の飛翔翼付近に設置された二基の風石炉とそれに付随する飛翔機構の方である。 飛翔艦ウェザーライトⅡはウルザとコルベールが設計した、ドミナリアとハルケギニアの魔法と技術を融合させ生まれた船である。 古代スラン文明の技で鋼と技術を、ハルケギニアの魔法で『固定化』と風石を、エルフの先住魔法で『反射』を。 様々な部分で従来とは異なる機能を持ったウェザーライトⅡは、例えメイン動力であるスランエンジンが停止させたとしても、「風石」によって従来通りハルケギニアのフネとして飛行することができる。 しかし、天高くからの自由降下により勢いをつけた船体を再び空に上げるためには、風石の力だけでは足りない。 「もっと強く!強く踏むんだ!力いっぱい!」 「ふぬぬぬぬぬ……も、モンモランシィ、僕に力をぉぉぉぉおおおおおお!!!!!」 掛け声一発背を反らして、脚力、背筋力、腕力を総動員してペダルを踏み抜こうとするギーシュ。 騒音溢れるブリッジに響く、かこん、という場違いに軽い音。 今、彼の足元のペダルが一段深く、押し込まれた。 勢いを殺しながらも落下を続け、高度千メイルにまで達したウェザーライトⅡ。 墜落は必然と思われたその船体から、強烈な閃光を伴う、魔力のフレアが発生する。 可視できる程に濃縮された魔力の噴射、緑の焔、それは風の純粋なる魔力の激流。 再燃焼装置。これこそがウェザーライトの飛翔機関に組み込まれた装置の名称。 再燃焼装置とは、使用することで通常の五十%から二百%程度の推力を得ることを可能とする一種の加速装置のことである。 反面、この装置は風石の消費が激しく、使用し続ければウェザーライトの風石は二十分程で空になってしまう代物である。 当然だが、この局面でそんなことを気にする必要は全く無い。 「いけええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」 叫ぶ、ギーシュ。 巨大なウェザーライトⅡの船体を背後から押し上げる轟風、烈風、大旋風。 風のスクウェアメイジが数人がかりで唱えたスペルような、豪烈な風が船体を後押しする。 自由落下の加速度、重力の鎖、百五十メイル級の船体の重さ、そういった全てのものを破り捨て、ウェザーライトは再び空へと舞い上がる。 「た、助かった……」 操縦席に座ったままぐったりと脱力したギーシュ、その顔は一事をやり遂げた男の顔をしていた。 「やり遂げたなギーシュ君!」 喜びの表情で自分を祝福してくれるコルベール。 「さすがグラモン元帥の息子じゃ。彼は良い後継者に恵まれたようじゃな」 立ち上がって腰をさすっている学院長。 「やったじゃないギーシュ!見直したわ!」 自分を褒め称える、ちょっと胸の部分がかわいそうなレディ。 「……」 無言のまま、こちらを見つめている更に胸がかわいそうなレディ。 ぅきゅぅぅぅぅぅぅ 背後から響いた、可愛らしいモンモランシーの声。 「って、モンモランシィーーー!?」 全力で振り向こうとしたギーシュ。 だが、 ぐ ぎ り そんな彼の腰から今、盛大にいい音が鳴った。 「ミス・ヴァリエール!ミスタ・ウルザの容態は!?」 「えっと、その、凄い火傷で…それで…」 ルイズの声に耳を傾けながら、コルベールが慎重な手つきでウルザの脈を取り、胸に耳を当てて心音を聞く。 途端にコルベールの顔がさっと蒼褪めた。 「……呼吸が停止している。心臓もだ」 聞いたルイズの体が驚きに強張る。 「そ、それってどういうことですかミスタ・コルベール!」 「お、おいデコッパゲ!そりゃどういうこった!?相棒は死んじまったってことかよ!?」 教え子とインテリジェンスソード、双方の言葉に神妙な顔つきで答えるミスタ・コルベール。 「分からない、だが……今すぐ蘇生措置をとれば間に合うかも知れない!」 早速コルベールが腕を捲り、心肺蘇生を始めようとしたとき、艦橋内に幾度目かの衝撃が走った。 「いかん!ミスタ・コルベール、敵襲じゃ!」 前方を見やれば、先ほどまで姿が見えなかった数騎の竜騎士がウェザーライトⅡの周辺に取り付き、炎のブレスを吐きつけていた。 ウルザと竜騎士に視線を配り、一瞬渋い顔を見せるコルベール。 これに対して、意外なところからの助け舟が入る。 「いけデコッパゲ!この船が落ちちまったら元も子も無ぇ、相棒のことなら俺に考えがあるからよっ!」 カタカタと音を鳴らしながら発言したのはデルフリンガー、聞いたコルベールが固く目を閉じた。 そうして次に目を開けたコルベールに迷いは無く、一直線にギーシュが腰を抜かしている操縦席の右に位置する席へと駆け寄った。 「みみみ、ミスタ・コルベール!正面に敵が!?」 「そのまま直進だミスタ・グラモン!」 コルベールの前に置かれているのは小さなウェザーライトⅡの模型が納められた半透明の球体。球の表面に触れながら口の中でルーンを唱える。 そうしてから、模型の前方、球体の表面を指でなぞりコルベールは呪文を発声した。 「ファイヤー・ウォール」 コルベールの防御の呪文が発動する。 だがそれは、本来発現すべきコルベールの眼前には現われはしない。 出現したのはウェザーライトⅡ前方の空間。そこに燃え盛る青炎の壁が現れたのである。 巻き込まれた二騎の竜騎士が、燐光のみを残す消し炭となって夜空に散った。 一方のルイズは、デルフリンガーの言う、「秘策」を試そうとしていた。 「おい娘ッ子、相棒を助けたいんなら、俺を相棒に握らせな。そうそう、そうだ…これで準備OKだ」 ウルザに握られたデルフリンガーが次に声をかけたのは、いつからかルイズの横に佇んでいたタバサである。 「それじゃ次は、青い髪の娘ッ子。お前さんだ、お前さん。何でもいいから魔法を唱えて、俺に向かって打ち込め!」 「ちょ、ちょっと何言ってるのっ!そんなことしたらあんたが壊れちゃうじゃない!?」 「いいからいいから、黙って見てろよ。手加減はいらねぇ、さあ思いっきりやってくんな!」 自信満々に語るデルフリンガーに、ルイズはそれ以上の言葉を紡ぐのを止める。 デルフリンガーの言葉に従って呪文を唱えるタバサ。 その顔は無表情で何も考えていないのか何かの予感があるのか、判別はつかない。 「エア・ハンマー」 風の槌が生まれ、それが正確にデルフリンガーへと打ち込まれる。 「ほいさ!」 呪文が直撃、したように見えたそのとき、ばん、と何かが破裂するような音が響いた。 風のトライアングルクラスのメイジが放った風魔法がその効果を発揮せず、デルフリンガーに当たった瞬間に消滅してしまったのを見たルイズが目を丸くする。 「ちょっと、何その隠し芸!?」 「おい嬢ちゃん、せめて隠し技って言ってくれよ。相棒があんまし俺を使ってくれねぇから今まで出番が無かったけどよ、俺も一応『伝説』なんだぜ?んじゃ、青髪の娘ッ子、次だ次!」 「エア・ハンマー」 「おいさ!」 「エア・ハンマー」 「よいさ!」 「エア・ハンマー」 「どっこいしょ!」 魔法を打ち込まれれば打ち込まれるほどに、刀身を輝かせていくデルフリンガー。 錆びだらけであったそれは、いつしか新品同様に美しい光沢を取り戻していた。 「どうよ、これが俺『デルフリンガー』の真の姿って奴だ」 「すごい、魔法を、吸収したの……?でもそれがミスタ・ウルザを蘇生させるのとどう関係があるのよ?」 「『伝説』様は魔法を吸収する以外にも隠し技があるんだよ。そのうち一つ、おりゃあは溜め込んだ魔力で『使い手』の体を一時的に動かすことができるんだ。今みたいにな、娘ッ子、相棒の胸に耳を当ててみな」 言われるままに、ルイズはウルザの胸に耳を置いてみた。 そこから響くのは、確かに聞こえる心臓の鼓動。 「う、動いてる!?」 「な?俺ちゃんと役にたつだろ?いらん子違うだろ?これを機会に相棒と娘ッ子は俺の扱いをもうちょっと考えてくれてもいいと思うんだぜ?って聞いてるか、おーい?」 これが私の経験する、初めての戦場であった。 ―――ギーシュ回顧録第四篇 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
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パック:眩い光の白き伝説 DW恩恵の世界、全デュエリストに5勝 モンスターカード 暗黒の竜王 ノーマル サイボーグ・バス ノーマル 剣竜 ノーマル メガザウラー ノーマル 効果モンスターカード 究極恐獣 ウルトラレア 暗黒大要塞鯱 レア ウォーター・ドラゴン レア E・HERO エッジマン レア E・HERO ワイルドマン レア オキシゲドン レア 奇跡のジュラシック・エッグ ノーマル サイレント・マジシャン LV8 スーパーレア サイレント・マジシャン LV4 レア ステルスバード スーパーレア 正義の味方 カイバーマン スーパーレア ハイドロゲドン レア 青眼の光龍 ウルトラレア ホルスの黒炎竜 LV8 ウルトラレア ホルスの黒炎竜 LV6 スーパーレア ホルスの黒炎竜 LV4 レア 儀式モンスターカード 精霊術師 ドリアード レア 融合モンスターカード E・HERO ワイルドジャギーマン スーパーレア 魔法カード 打ち出の小槌 レア 継承の印 ノーマル 地獄の暴走召喚 レア ジュラシックワールド ノーマル スケープ・ゴート ウルトラレア 大進化薬 ノーマル テールスイング ノーマル ドリアードの祈り ノーマル フォトン・ジェネレーター・ユニット ノーマル 防御輪 レア ボンディング-H2O ノーマル 磁力の召喚円 LV2 ノーマル 四次元の墓 ノーマル 輪廻転生 ノーマル 罠カード 因果切断 ノーマル エレメンタルバースト ノーマル 化石発掘 ノーマル ゴブリンのその場しのぎ ノーマル 狩猟本能 ノーマル 成功確率0% ノーマル 生存本能 ノーマル 大地震 ノーマル 大噴火 ノーマル ダメージ・コンデンサー ノーマル ヒーロースピリッツ ノーマル 風林火山 ノーマル 復活の墓穴 ノーマル 埋蔵金の地図 ノーマル
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マジシャンズ・エイプ:? 効果モンスター (TF4オリジナル) 星3/闇属性/獣族/攻800/守1200 このカードは特殊召喚できない。 このカードがフィールド上に表側攻撃表示で存在する場合、 1ターンに1度、手札のモンスター1体を墓地へ送り、 相手フィールド上に表側守備表示で存在する モンスター1体を選択して発動する事ができる。 このターンのエンドフェイズ時まで、 選択したモンスターのコントロールを得る。 この効果でコントロールを得たモンスターは、 このターン表示形式を変更する事はできない。 解説:TF4オリジナルカード アニメでディマクが使用したカードの1つ。 自らの特殊召喚を封じる召喚ルール効果と、手札のモンスターをコストに相手の守備表示モンスター1体のコントロールを得る起動効果を持つ。 レベル3の下級モンスターだが特殊召喚は不可能なので、キラー・トマトからのリクルートやレスキューキャットからのサーチはできない。 コントロール奪取効果は表側守備表示限定ということで、壁モンスター相手でもなければ下準備無しでは咄嗟に発動できない。 エネミー・コントローラーやアヌビスの呪いで攻撃をいなしつつ守備表示にしたり、 悪夢の迷宮やレベル制限B地区で無理矢理守備表示にしてやれば奪い易くなる。 奪ったモンスターは表示形式変更が出来ないため、補助しなければ奪ったモンスターで攻撃できず、エンドフェイズには元に戻ってしまう。 速やかにアドバンス召喚のリリースにしたりシンクロ素材にするなりして処理しよう。 このカードは場持ちもあまり良くなく、召喚制限から再利用も難しいため、奪ったモンスター共々地縛神などの最上級モンスターのリリースにしてしまうのも手。 後に効果もそのままにOCG化され、TF6ではオリジナルカードではなくなった。 アニメ版の効果では特殊召喚が可能でモンスター以外のカードも墓地へ送れ、 表示形式関係なしにモンスターのコントロールを永続的に奪えた。 ゲームでの調整に伴い、ファイターズ・エイプとは対照的に弱体化している。 「このカードの種族は魔法使い族としても扱う」という効果も持っていたが、ゲームでは再現されていない。 関連カード ゲーム別収録パック No.無し DS2010パック:パック:無し? WiiDT1パック:パック:無し? DS2009パック:パック:無し PSPTF4パック:パック:-(P)TF4:チェッカーフラッグ(P)TF4 未チェック TF4オリジナル DS2008パック:パック:無し PSPTF3パック:パック:無し DS2007パック:パック:無し DS SSパック:パック:無し DS NTパック:パック:無し PSPTF2パック:パック:無し PSPTF1パック:パック:無し PS2TFEパック:パック:無し OCGパック:パック:無し
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アーティスト:欅坂46 レベル:6(レギュラー版第6回までは5) 登場回数:6(パイロット版第2回、第3回、レギュラー版第6回、第25回、第26回、第37回) 挑戦結果 池田裕楽:成功(レギュラー版第26回)
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パック パック 販売パック その他 販売パック 1パックにノーマル4枚+レア以上1枚、1箱につきウルトラ2枚・スーパー4枚・レア14枚(一部例外を除く)。 レベルはプレイヤーのデュエリストレベルのこと。 信頼度は全キャラの合計。キャラのハートが1つ満タンで1,000で計算。ハート4つ満タンなら4,000ということになる。ハートを400個満タンにすれば信頼度が条件のパックは全て出現するが、つまり100人クリアに相当する。(なお、攻略可能なキャラはバージョン違いも全て含めて114人) 胡桃沢にレアフィギュアを渡すと、フィギュア1つにつきカードパックの値段を10%割引してくれる。5種類全て渡せば50%割引。(詳細はランダムイベント) No 価格 パック名 出現条件 P01 80 ノービスモンスター 最初から出現 P02 80 ノービス魔法 P03 80 ノービス罠 P04 100 スタンダードモンスター P01の収集率50%以上 or レベル10以上or チャレンジ達成35以上or 信頼度合計10,000以上 P05 100 スタンダード魔法 P02の収集率50%以上 P06 100 スタンダード罠 P03の収集率50%以上 P07 120 エキスパートモンスター P04の収集率70%以上 or レベル20以上or チャレンジ達成70以上or 信頼度合計20,000以上 P08 120 エキスパート魔法 P05の収集率70%以上 P09 120 エキスパート罠 P06の収集率70%以上 P10 150 グランドマスター御用達 P07~09のカード収集率80%以上or レベル40以上 or チャレンジ達成140以上 or 信頼度合計60,000以上 No 価格 パック名 出現条件 P11 180 スーパーハイインパクト 特定デュエリストがパートナーor レベルが22,24,26,28,30,32,34,36,38,40でランダムor チャレンジ達成80,85,90,95,100,105,110,115,120,125でランダムor 信頼度合計40,000以上 P12 180 しっかりカギをかけまショウ P13 180 ルール・ザ・ワールド P14 180 スペシャルブレークダウン P15 180 バーニング許可局 P16 180 カラフルキャラクター P17 180 ベーシックフレーバー P18 180 メルティングポイント P19 180 思い出の英雄譚 P20 180 マスターオブセレモニー No 価格 パック名 出現条件 P21 150 角と翼と爪と鱗と牙と 特定デュエリストがパートナーor レベルが4,8,12,16,20,24,28,32,36,40でランダムor チャレンジ達成40,50,60,70,80,90,100,110,120,130でランダムor 信頼度合計40,000以上 P22 150 囁き唱え祈り念ぜよ P23 150 武装最前線 P24 150 実力行使ハードウェア P25 150 純白の使者 P26 150 暗黒の眷属 P27 150 獣性の証明 P28 150 飛び出せビオトープ P29 150 彼方の大地の王者 P30 150 水際フェノメノン No 価格 パック名 出現条件 P31 120 月曜 それがお前の心の俺か 曜日パックレベル20,22,24,26,28,30でランダムor チャレンジ達成5,20,35,50,65,80でランダムor 信頼度合計30,000以上 P32 120 火曜 もえろよもえろよ俺よもえろ P33 120 水曜 寝耳に俺 P34 120 木曜 俺の便り P35 120 金曜 玉磨かざれば俺なし P36 120 土曜 ゆかりの俺 P37 150 日曜 個は俺にして俺はまた個なり 曜日パックレベル45以上 or チャレンジ達成156以上 or 信頼度合計60,000以上 P38 180 オーバーレイネットワーク 特定デュエリストがパートナーor レベル27以上 or チャレンジ達成94以上 or 信頼度合計25,000以上 P39 180 響きあうハーモニー 特定デュエリストがパートナーor レベル35以上 or チャレンジ達成122以上 or 信頼度合計60,000以上 P40 50 プレーンフレーバー 最初から出現 No 価格 パック名 出現条件 P41 150 未来を照らす絆 特定デュエリストがパートナーor レベル7,10,13,16,19,22,25,28,31,34,37,40でランダムor チャレンジ達成12,24,36,48,60,72,84,96,108,120,132,144でランダムor 信頼度合計50,000以上 P42 150 荒ぶる魂の鼓動 P43 150 大いなる黒翼 P44 150 漆黒の薔薇の香り P45 150 聖レボリューション P46 150 カモン!無限の力 P47 150 エターナルケージ P48 150 コンチネンタルサーカス P49 150 あいつらトラブル P50 150 アイドルを探せ P51 150 真タイムトラベラー P52 150 トラウマチックが止まらない P53 200 時空を超えたテーゼ P41~46のカード収集率70%以上or レベル42以上 or チャレンジ達成146以上 or 信頼度合計60,000以上 P54 200 かっとビングだぜオレ P47~52のカード収集率70%以上or レベル44以上 or チャレンジ達成153以上 or 信頼度合計60,000以上 P55 250 たぶんタブーね P53~54のカード収集率80%以上or レベル46以上 or チャレンジ達成160以上 or 信頼度合計80,000以上 No 価格 パック名 出現条件 P56 300 マイワイフプラスプラス 胡桃沢にレアフィギュア5種類を渡す(詳細はランダムイベント)or レベル39以上 or チャレンジ達成135以上 or 信頼度合計200,000以上 P57 573 正午の星座 パック購入画面で「上上下下左右左右LR」or レベル20以上 or チャレンジ達成70以上 or 信頼度合計25,000以上 P58 300 プレビアスジェネレーション TF1~5のいずれかとUMD連動or レベル25以上 or チャレンジ達成87以上 or 信頼度合計32,000以上 P59 1000 スペシャルギフト レベル50or チャレンジ達成173種類すべて or 信頼度合計400,000以上 P60 500 ファイナルチェッカーフラッグ P01~P58のカード収集率85%以上or レベル50 or チャレンジ達成173 or 信頼度合計300,000以上 その他 パック未収録カード 必需カード一覧 初期デッキ&強化法1 初期デッキ&強化法2 初期デッキ&強化法3
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図鑑No 0001~|0051~|0101~|0151~|0201~|0251~|0301~|0351~ ※エネミーのマジックスキルは個人的な印象です。 魚人マジシャンヒーロー 図鑑No 名前 属性 タイプ 移動 0339 魚人マジシャンヒーロー 水 魔法 地上 マジックスキル MAXスピード-防御力+バーストサイズ特大 説明 魚人ヒーローの亜種であり、マジシャン。 強烈な魔法弾でキャラをまとめてふっとばす危険な敵。 ふっとばされている間に場がガラ空きにならないよう、いつでも召喚できるキャラを準備するのが攻略の鍵。 備考 魔法でまとめてふっとばす攻撃をする。 隙ができないようにいつでもキャラを召喚できるようにする必要がある。
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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ 3章 (53)ウルザの砲台 これで何度目かとなる交錯。 空中を素早く逃げ回るワルドの進路を武具の射出で妨害し、一気にウルザがその距離を詰める。 『ハッ!』 距離が縮まると同時、裂帛の気合いとともに、二人は互いに弾幕のような無数の光条を放った。 ワルドのそれは、迎撃のため。 ウルザのそれは、ワルドの迎撃を打ち落とすため。 ウルザの呪文はワルドの呪文を残らず撃ち落としていく。それは相手の放った矢を射るが如き、針の穴を通す達人技。 迎撃が意味をなさないことを悟ったワルドも即座に後退に徹しようとするが、追随するウルザがそれを許さない。 ウルザは無造作にワルドの懐に飛び込むと、左手でに握った大剣を払う。重さと早さが乗った一撃が、ワルドを襲った。 しかしてワルドもただ者ではない。 ワルドは回避しきれないと判断すると、素早くサーベル型の杖を腰から引き抜き、ウルザの剣をいとも簡単にいなしてしまった。 そう、接近戦こそは彼本来のフィールド。 ロングレンジの戦いならともかく、ショートレンジでの戦いなら、転化前の技能が存分に生かし切れる。 追い詰められたワルドは、防戦どころか逆に剣杖にブレイドの呪文を纏わせて、ウルザに接近戦を挑んできた。 こうなってしまっては、いかに長い時を生きてきたとはいえ、所詮はアーティフィクサー。本職の戦士を相手にするのは難しい。 それが自身と同じ、定命の軛から解き放たれたものとあっては尚更に。 あっという間に攻守は逆転。 今度はワルドが攻める展開となった。 突き、払い、突き、フェイント、簡易詠唱呪文による牽制を織り込みつつ距離を詰め、間髪入れずに引き込む真空を纏わせての跳ね上げる斬撃。 立て続けに鋭い攻撃を繰り出されたウルザが、堪らず距離を離そうとするが、その動きにもぴったりとワルド追いすがる。 突き突き突き突き、刹那に四度。恐るべきプレインズウォーカーの魔力を乗せた刺突がウルザを襲う。 流石にこれは防ぎきれないと判断したウルザが、非常手段に訴える。 次の瞬間、二人がいた空間を極太の熱線が焼き払っていた。 「埒が開かんな」 そう呟いたウルザは、最初そうであったように、再びワルドとの距離を離していた。 ウルザもワルドも、共に熱線によるダメージはない。 単に仕切り直しとなっただけである。 こうして距離を詰めようとしたウルザを、ワルドが撃退して距離を離すというやりとりも、すでに何度か目となっていた。 そもそもプレインズウォーカー同士の戦いというものは、片方が消極的な戦法を取ると長期戦になりやすい。 加えて、本来ウルザは自分で戦うことを得意としないプレインズウォーカーである。 〝愚か者どもの破滅〟テヴェシュ・ザットや、〝世界最古のプレインズウォーカー〟ニコル・ボーラスといった面々のような戦闘力は持ち合わせていない。 もしも戦うならば、莫大な魔力やアーティファクトを利用して、距離を離しての戦いが本来の戦法なのだ。 一応、杖を使った格闘術もある程度身につけているが、それにしたところでファイレクシアの闘技場でジェラードに打ち負かされる程度の腕前である。 本物の勇士を相手にするには心許ない。 それでも、ウルザがワルドに接近戦を挑むのは訳がある。 それはワルドが展開し、周囲の空間に編み込まれた儀式魔法の術式陣に理由があった。 今や二人の戦闘空域の至る所に浮かぶ、一見すると無造作に漂う光の紐にしか見えないそれは、ワルドが作り出している次の攻撃のための布石だった。 捕縛か、封印か、攻撃か、防御か、巧みに偽装された術式は、一見しただけではその正体を掴みきれない。 その呪文がどのような呪文であるか、ワルドの狙いがなんなのかを突き止めるのが、ウルザにとってのワルド攻略の第一歩だった。 その為にも、ウルザにはワルドとの距離を詰めて戦う必要があった。 距離を詰めれば、儀式魔法の展開を直接その目にすることができる。そうなれば、判別は痕跡から魔法の正体を探るよりもずっと容易い。 また、距離を詰めることで、儀式魔法の正体を知られまいとするワルドが一時的に呪文の詠唱を中断するという副次的な要素もある。 だが、ウルザにとっての誤算は、ワルドの有する卓越した戦闘技術。 覚醒してからほんの数ヶ月のプレインズウォーカーとは思えないほどに、ワルドの動きは的確だった。 センスが良いというべきか、それとも昔取った杵柄とでもいうべきか。 ワルドの動きは、プレインズウォーカーの動きとしても、実に合理的であった。 相手の術を捌きながら行う攻撃のタイミングにしても、複数の呪文を操りながら相手の呼吸を乱すフェイントにしても、熟達のプレインズウォーカーに匹敵する動きなのである。 結局、ウルザはワルドの得意とする接近戦を挑まなければならず、その度に接近戦になれば有利なワルドが、結果的にウルザとの距離を離してしまう、そんな戦いが続いていた。 一方で、ワルドはウルザが焦れてきているのを感じ取っていた。 これまで六度、それがウルザが接近戦を挑んできた回数である。 その判断は間違っていない。確かに、時間をかければかけるほどに、不利になるのはウルザなのだ。 再びウルザが飛翔速度を上げてくる。 これで七度目となる接近戦を挑もうというのだ。 だが、すでにワルドは準備の殆ど終えてしまっている。 (……そろそろ頃合いか) 予定よりも準備に長く時間をかけてしまったが、ファイレクシアの英知から授かった、ウルザを倒すための秘策は下拵えが済んでいた。 あとは最後のピースを嵌めて、絵を完成させてやる段階だ。 (それでは最後の一押し、決めさせてもらおう!) ウルザの動きに合わせたように、ワルドもまた、その距離を詰めてきた。 短い時間で互いに接敵を果たすと、ウルザは杖とデルフリンガーで、ワルドはブレイドを纏わせた杖で、必殺の一撃を放った。 杖同士がぶつかり合い、弾き合う。杖を弾いた後も、デルフリンガーが追の撃となってワルドを狙うが、これは危なげもなくかわされてしまった。 そして続けざまに一合、二合、三合、ウルザとワルドは切り結ぶ。 ウルザは迎え撃つのではなく、自ら踏み込むようにして接近戦を挑んできたワルドに違和感を覚えていた。 これまではウルザが挑み、ワルドが消極的に対応するという形だったのが、ここに来て自分から前に出てきたことに引っかかりを覚えたのだ。 その意味するところは何か? ――決まっている、相手の準備が整ったのだ。 すぐさまウルザはその場を離脱するために動いた。 だが遅い。 ワルドの動きははウルザのそれより尚早く、捕らえた獲物を逃しはしない。 退きながら/追い詰めながらの一進一退。 迷い無く打ち込むワルドに、ウルザが押され始める。 そして数度目の打ち合いの末、杖と大剣を振り上げたウルザに、決定的な隙が生じた。 杖も大剣も防御にまわせ無い。胴体はがら空き、これを隙と言わず、何を隙というのか。 「終わりだ!」 ワルドが必殺の刺突を繰り出そうとした、その時だった。 ウルザの口元が、微かに動いた。 その瞬間、ワルドの背筋を這い上がる悪寒。 遅れて、その鋭敏な感覚が、自分たちに迫る膨大な熱量の発生を感じ取った。 「貴…ッ!」 見ればウルザの唇がわずかに歪んでいた。 そこで初めて、ワルドはウルザの意図を読み取った。 ウルザは、自分もろともワルドを火線で焼き払うつもりなのだ。 なんて馬鹿げた計画。しかし、『ファイレクシアの目』から受け取ったウルザに関する知識から考えれば、あり得ないとは言い切れない。 無論、気づいたワルドはその場を離れようとする。 だが、ワルドは必殺の刺突を繰り出すために、踏み込みすぎていた。 「…様ッ!」 ウルザの右手が、ワルドの右腕を掴んでいた。 ウルザが右手で握っていたはずの杖は、いつの間にやら虚空に溶けて消えている。 つまりは、最初の隙から、全ては罠だったのだ。 「経験が足りないな、子爵」 ウルザはそう呟くと、掴んだ腕をぐいと引き寄せ、ワルドの体を盾にするように、その体を密着させた。 そして、次の瞬間、怒濤の火線が正面からワルドに迫り、その視界を赤一色に染め上げた。 十分なだけの防御を備える余裕は、無い。 「あ、あああああああああああああああああああ!!」 ワルドの絶叫がこだました。 プレインズウォーカーとは。 世界の外に広がる久遠の闇、そこに繋がることで供給される無限の魔力。 老いることなく、永久の時間を約束された不死。 たとえ破壊されようとも、虚無の闇に溶け込んでいる本体を殺されない限り死ぬことはない、血を流さぬ肉体。 それらを併せ持った、超越的な生命体である。 プレインズウォーカーとウィーザードの存在は、よく象と蟻に例えられる。 象にその気がなくとも、彼が寝転べば無数の蟻が潰され、また、彼が池で水浴びをすれば、無数の蟻が溺れ死んでしまう。 無自覚のままに力をふるう、恐るべき存在。 だが、一見、無敵に見えるプレインズウォーカーも、滅ぼす方法なら無数に存在する。 それは長いドミニアの歴史の中で、どれだけのプレインズウォーカーが滅ぼされてきたかを紐解けば容易に証明できる。 如何に不老不死を約束されたプレインズウォーカーとはいえ、世界への意志表層体である肉体を破壊されればダメージとなるし、肉体を破壊されれば再構築するまでの暫くの時間は世界に関われなくなってしまう。 だが、彼らにとって真の驚異は、プレインズウォーカーの例外。 『プレインズウォーカーならば、プレインズウォーカーを葬ることが可能』ということである。 大した力も持たないプレインズウォーカーなら兎も角、強大な力を持つプレインズウォーカーともなれば、世界への端末である意志表層体への攻撃で、プレインズウォーカーとしての核に直接ダメージを与えることもできるのである。 そしてまた、その延長として、死に至らしめることもまた可能なのであった。 炭化して、パチパチと爆ぜるワルドの亡骸を特に感慨もなく空に投げ捨てる。 先ほどまで展開されていた儀式呪文の陣は消えている。 ウルザは無傷だった。 いや、正確には所々に火傷は負っていたが、負傷と呼べるような負傷は負っていない。 それもこれも、盾にしたワルドと、アーティファクト『ウルザの鎧』のおかげであった。 しかし、ワルドを葬ったウルザの顔色は優れなかった。 「……手応えがなさ過ぎる……?」 そう呟いたウルザは、右手で白い髭を撫でた。 確かに先ほどまでの戦いは激しいものだった。 だが、相手はファイレクシアの支援を受けているのだ、ウルザの予想ではもっと激しいものとなるはずだった。 「……ふむ」 ウルザが気まぐれに下を見下ろしてみると、そちらでは連合軍と、アルビオン軍とが熾烈な戦いを繰り広げいるところだった。 どうやら形勢は連合軍にとって不利な流れらしい。 これに関しては戦闘の最中に、強大なクリーチャーが召喚されたのをウルザも感じ取っていた為、別段驚くこともなかった。 その光景を見ながら、ウルザは独りごちる。 「……子爵がここまで呆気ないとなれば、計画を少々変更した上で、予備のプランを動かさねばならぬか」 今のところ、ウルザの行動計画は少々の修正を加えねばならぬ程度で、まだ大きな支障はきたしてはいない。 このまま順調に進めば、ウルザの目論見通りにことは進むことになるだろう。 そのことを思い、ウルザは小さく唇の端を上げた。 だが、それこそが油断だった。 突如として体の中心から、ズンッ、と重たい衝撃が広がった。 ゆっくりとウルザが自分の肉体を見下ろすと、自分の体の鳩尾から、見覚えのある軍杖の先が生えていた。 ――背後から、貫かれている。 そう理解したのと、声を聞いたのは同時だった。 「遍在さ。ミスタ」 背後からウルザを刺し貫いた、ワルドが言った。 風の遍在。それは実体のある分身を生み出す、風のスクウェアスペルだ。 倒したはずのワルド、そして今ウルザを貫いているワルド、風の遍在。 それらから導き出されるのは、先ほどまでウルザが戦っていたのは分身に過ぎなかったという結論である。 「今回の化かし合いは、私の勝ちのようだ」 言いながら、ワルドは深く、根本まで杖を抉り込む。 血は出ない。プレインズウォーカーは、血を流さない。 人間ならば致命傷であろう一撃を受けても、ウルザは顔を歪めるに留まった。 「愚かな。確かに無傷とは言えないが、この程度はプレインズウォーカーにとって、致命傷にはなり得ない。知らぬ訳でもあるまい」 「勿論知っている。だからこその下準備なのだよ」 ワルドがそう言った途端、先ほどまで消えていた、儀式呪文の術式である輝く紐が、再びその姿を現した。 そして、その先端がウルザを貫いたワルドの杖の先端に繋がっていた。 「ウィアド!」 ワルドがそう、儀式呪文を締めくくるキーワードを叫ぶと、周囲に縦横無尽に走っていた光の帯が、黒く変色した。 そしてそのまま、ウルザを取り囲む輪と変化して、圧縮するようにして杖の先に灯された、呪文の終端へと収束していった。 そして全ての術式が巻き取られると、ワルドの術は完成した。 最初に爆発したのは〝黒い光〟とした表現できないものだった。 それが収まったときにはもう、術の効果は発揮されていた。 目と鼻の先に灯された極小の黒点、そこから発せられる超級の重力が、ウルザを捕らえて放さなかい 現れたのは、全てを吸い込む黒い穴だった。 それは空気、魔力、音、光の別なく、どんなものでもリバイアサンのようにどん欲に飲み込んでいく。 その危険性を察したウルザは、その底の抜けた穴を消滅させようと呪文を唱えた。 だが、その呪文すらも吸い込まれてしまう。 二度三度と繰り返してみたが、結果は変わらない。 そうこうしている間にも、穴はウルザの体をも引き込み始める。 「――、―――!」 その声すらも吸い込まれてしまう。 「ハハハ、無駄なあがきだ! その『黒い穴』の前にはどのような抵抗も無意味だ! おとなしく吸い込まれ、放逐されるが良い!」 そして、その言葉を契機にしたように、指先ほどのサイズだった黒い穴は、一気に二メイルほどの大きさまで巨大化し、すっぽりとウルザを飲み込んでしまったのだった。 時間は少々遡る。 ウィンドボナ周辺、およびその上空での戦いは、泥沼化の様相を呈しつつあった。 地上から空へ、弾雨が下から上へと登っている。 先ほどまで勢いを弱めていた対空砲火が、先ほどよりも一層強くなり、空に展開した連合艦隊を攻撃しているのだ。 「〝アントワープ〟大破!」 「救助を急がせろ!」 「地上軍は何をしている!?」 「伝令だっ、伝令を飛ばせ! 地上軍に対空砲への攻撃を優先するように伝えろ!」 「くそっ、下の連中は何をやっている!?」 ブリッジから場所を移して作戦室。そこでは怒声が飛び交う中、アンリエッタが慌てる参謀達に囲まれて、きりりと口元を引き締めていた。 「対空砲火が強くなりましたね」 「は……」 その言葉に、司令官席に座ったアンリエッタの横に立つマザリーニが口を開いた。 「先ほど空にドラゴンが多数出現するのと同時に、地上でも多数の魔物が出現したのが報告されております。それに関連するのではないかと思われますが……」 マザリーニがそう言っている間も、参謀達は喧々囂々と地上軍に敵の対空攻撃を止めさせる算段を立てている。 現在トリステイン艦隊は、アルビオン艦隊を相手にしつつ無数の大型ドラゴンを相手にしている。更にそこを地上からの対空攻撃を受けている形だ。 けれど、苦しいのは空の艦隊だけではない。地上に展開した軍も、同様の状況にあるはずだった。 そんな中で、地上軍に対空砲火を止めるのを最優先させるというのは、地上軍にさらなる血を流せと命じるようなものである。 しかしそれでも、 「やってもらわねば、我々の命運は尽きてしまいますね……」 今の連合艦隊に、アルビオン艦隊、ドラゴンの群れ、対空砲、これらすべてを相手に三面作戦をとって、戦線を維持できるほどの体力はないのだ。 このままでは遠からず、連合艦隊は再編不能なほどの打撃を受けてしまうに違いない。 そうなってしまえば、地上への援護もままならない。つまり、艦隊の命運はそのまま地上軍の命運をも左右するのである。 選択肢はない、無理でもやってもらう他無いのだ。 「しかし……それでも、あのドラゴン達をもう一度呼ばれたら」 「押し切られてしまうでしょうな」 そう、アルビオン側の追加戦力として現れたドラゴン達は、それだけ戦局を塗り替えるに十分な戦力であった。 アンリエッタ達には、アルビオン側がこの後どれだけ追加戦力を投入できるかが分かっていない。 相手の総兵力が全く見えてこない状況での戦闘は、恐るべき重圧となってアンリエッタを押しつぶそうとする。 しかしそれでも (私は……強くなると決めたのだから。あのとき、決して二度と泣いて立ち止まったりしないと、誓ったのだから!) あの日の想い、あの日の言葉を嘘としないために、愛したウェールズと釣り合う王となるために、こんなところで負けるわけには、いかないのだった。 「地上に伝令を飛ばしなさい! 対空砲への攻撃を続行。その破壊を最優先にするようにっ! もたもたしているとアルビオン艦隊からの対地攻撃が雨あられと降ってきますよ、とも付け加えるように伝令に伝えてください!」 その言葉に、一瞬まごつく参謀もいたが、その場にいた多くの将兵および参謀は、アンリエッタの言葉に即座に従った。 彼女の言葉を地上へ伝えるために、慌ただしく人が動く。 ばたばたと足音が響く中、席に座ったアンリエッタだけが静かだった。 アンリエッタは美しい爪が傷つくのも気にせず、何かを考えながら右手の親指の爪を噛んだ。 「戦力が足りません……」 「………」 横に立つマザリーニが、何も聞かなかったという風に沈黙を保った。 「……奇跡などという都合がよいものが本当あるなら、今こそ出現願いたいところですね……」 マザリーニは、その言葉も聞かなかったことにした。 「報告いたします!」 慌てた様子の士官が一人、作戦室へ飛び込んできたのはそのときだった。 「どういたしました?」 喧噪の中、入り口に現れた彼に、間髪入れずにアンリエッタが問いかけた。 「はっ……」 女王自らに直接声をかけられるとは思っていなかった年若い下士官が、戸惑いながらその場に傅いた。 「形式など気遣い無用。そのまま続けて下さい。何がありましたか?」 先ほどまでの苛立った様子などおくびにも出さずに、アンリエッタが落ち着いた声色で再び聞いた。 通常、作戦室にはある程度以上の地位のある士官でなければ、立ち入りが許されていない。彼のような下士官が報告に来たということは、現場では上級士官がその場から離れられない何かが起こったということである。 そのような事態の前に、形式などに拘ってはいられなかった。 「は、それが……空に、穴が……」 「……穴?」 「はい。穴、でございます」 そしてちょうどその時、大きな音を立てながら、船体が傾いた。 この、大きくて長いものはなんですか? エレオノールからウルザへ 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ 3章 (27)円卓 「当諮問会での発言は議長である私か、副議長であるマザリーニ枢機卿の許可が必要となります。 それ以外の口述は発言として認められません、これに従わない場合は私の権限において退室を命じる場合があります。また、偽証を行った場合には王権への反逆罪に問われることもあります」 張りのある、女王アンリエッタの声が円卓の間に響き渡る。 ルイズは学院でのクラス会の様子をふと思い浮かべたが、今が女王陛下の御前であることを思い出し、その考えを振り払った。 議長であるアンリエッタの説明は、発言の仕方に始まり、退室命令・王権反逆罪に類する罰則規定の解説、諮問会で知り得た情報は参加者同士での共有は許されるが、それ以外の人間に伝える場合は国王の許可を必要とする守秘義務の解説に及んだ。 長々と続く単調な説明に、ギーシュとモンモランシーが眠くなってはいないかと心配になりルイズは二人の顔色をうかがったが、どうやらその心配は杞憂であったようだ。 二人はかちこちに緊張して、真剣な顔つきでアンリエッタの言葉一つ一つに対して律儀に頷いている。 今度は本当に言っていることが頭に入っているのかが心配になったが、流石にそこまで馬鹿じゃないはず、とルイズは思うことにした。 そうして暫く後、女王の説明が終わったのを見計らったマザリーニが、会を次の手順へ進ませるべく発言を行った。 「それではまず、順に名を述べ身分を明らかにし、この当会への招集を受けた理由を述べてください」 そう言ってマザリーニは、自分の右に座るエレオノールにその骨張った手のひらを向けて、自己紹介を促した。 「エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールと申します。 身分はトリステイン王立魔法研究所主任研究員ですが、本日は所長が急病とのことですので、その名代として参りました。 若輩者故、いたらぬ点もあるかと思いますが、どうか皆様、よろしくお願いいたします」 促され立ち上がったエレオノールの、見事な挨拶。 先陣をきる者としての貫禄は十分。物怖じせずに堂々とした、正に完璧な形の自己紹介。 自分の姉の完璧さを毎度のことながら確認し、ルイズは誇らしい反面で、自分とのあまりの違いに劣等感を感じずにはいられなかった。 しかし感じたのはそれだけではない、この姉の挨拶に関してルイズには一点気にかかる部分があった。 いくら所長の名代とはいえ、一研究員の立場であるエレオノールが、なぜこの場に出席することになったのか、その部分がルイズの中で腑に落ちなかったのである。 まあ、もっともこれは事情を詮索するためルイズの父であるヴァリエール公爵が根回しを行い、その結果としてエレオノールが送り込まれた為だったのだが、 この事実を知っているのは当のエレオノールとアンリエッタ、それにマザリーニだけであったので、ルイズがそれに思い至ることのができなかったのは当然のことである。 挨拶は順に右へと続いていく。 エレオノールが着席すると、次はその右席についていたモット伯爵が立ち上がった。 「ジュール・ド・モットと申します。王宮よりトリステイン魔法学院への勅使の役目を仰せつかっております。 この度は先の戦役で私が見聞きしたことを報告するようにと、マザリーニ枢機卿から招致を受けてこの場に立っております。 どうぞ皆様、よろしくお願いします」 そう言って長身の体を窮屈そうに曲げて一礼するモット伯爵。 彼がその顔が上がったとき、偶然にもモット伯とルイズと目が合った。 そして白い歯を見せ笑顔を見せたモット伯爵に、ルイズは怪訝な顔をするばかりであった。 モット伯爵が着席すると、次に立ち上がったのは長身の女性。 今は上等そうな白いシルクのドレスを身に纏い、上品そうに微笑んでいる――土くれのフーケ。 この諮問会において最も場違いな人間がいるとすれば、間違いなく彼女であろう。 当然参加者達の視線が一斉に彼女に向いた。 彼らの視線を集めながら、フーケはゆっくりと立ち上がり、何とも軽やかな一礼をして見せた。 その一礼に、参加者の誰もが目を奪われた。 気品と美しさが織り混ざった見事な一礼、エレオノールのそれが完璧な作法であったとするならば、フーケのそれは見た者を引きつけずにはいられない洗練された芸術のようであった。 「皆様お初にお目にかかります。わたくしはマチルダ・オブ・サウスゴータ、今は無きアルビオン領サウスゴータ太守の長女にございます。 現在は諸国を旅する旅人として渡り鳥のような生活をしております」 この説明を聞いて、ルイズは口をまん丸に開けて驚いた。 始祖に誓ったその舌の根も乾かぬうちに、彼女は堂々と自分はこの場にいる人間とは初対面だと言い切ったのだ。 そして更に、城下を騒がせた盗賊であることを伏せてアルビオンの貴族だと名乗り、その身分は旅人であると言ったのである。 「なっ……何よそ、むぎゅぅ!」 それは、とフーケの嘘を追求しようとしたルイズの口元に、さっとタバサの手が伸びてそれを塞いでいた。 「今は……」 普段以上に小さな声でそう囁くタバサ、その言葉にルイズも渋々と従った。 ルイズ達がそうしている間にも、フーケの言葉は続いていた。 そしてそれは、ますますルイズ達を驚かせる内容であった。 「わたくしはこの場にオールド・オスマン、及びミスタ・ウルザの質問に答えるようにと、王宮の招致を受けてこの場に立っております。 ですがその前に、事前の取り決めであった、わたくしが犯してしまいました無許可での国境越えその他に関する、今現在全ての罪状に対する免責を書面にして頂きたく思います」 再び口をあんぐりと開けるルイズ。貴族の子女としては大変見苦しい姿であったが、試しに横を向いてみたところ、ギーシュとモンモランシーも同じ顔をしているところだった。 全面的な免責要求。 よくもぬけぬけと言ったものである。フーケはこれまで行った全ての犯罪行為に対する免責を要求し、しかもその代表を『無断での国境越え』などというどうでもいいもので隠してみせたのだ。 このような無茶な要求を姫殿下、いや、女王陛下がお許しになるはずがない。そんな期待を込めてルイズは、自分が敬愛してやまないアンリエッタへ期待の眼差しを送った。 けれど、その彼女が次に口にした返答は、ルイズを更に困惑させるものであった。 「それは今この場で書面にしなくてはなりませんか?」 免責への同意。 今度こそ大きく開いた口が閉じない。口から涎が垂れる直前に、タバサがとっさに閉じてくれたので事なきは得たが、そうでなければ危なかった。 「はい女王陛下。先に書面にして頂きたく思います」 アンリエッタが諦めたようなため息を一つ吐く。 慣例に則るならトリステインにおいては、今回のような場合には事後に非公式の場で取引を交わし、免責書類を発行するのが常であった。 それを自動筆記によって記録されている場で、女王が犯罪者との取引を行ったという事実を公然と言い放ってみせる胆力は見事と言わざるを得ない。 なるほど、そう考えればこの盗賊が計算高さと度胸の良さを兼ね備えた油断ならない相手であることがアンリエッタにも知れた。 とるに足らない犯罪者を相手にするのではなく、対等の取引相手としてまず認めろと彼女が言いたいのだろうということも理解した。 しかし、仮にも王国の面子に泥を塗ったのである、それだけの危険を犯すに足る自信はどこから来ているのか。 アンリエッタは国を率いる王として、彼女の手の中で未だ伏せたままになっているそのカードに、強く興味をひかれた。 「マザリーニ枢機卿、書類の準備をお願いします」 「……ただいま用意致します」 そもそも諮問に対して今回のような大きな取引が行われることは先例が無い。 すでにそこからして例外づくしであったのだが、これは国の存続に関わる大事の最中、どの様な条件を呑んででも彼女の知っていることを吐き出させることが最優先であるという、女王アンリエッタの非常時の判断であった。 彼女のそんな姿勢を、この場に出席していない最高法院の人間が知ったらどんなことを言い出すか……、マザリーニは後の処理を考えて小さく嘆息し、書類にサインを走らせた。 「こちらが免責書類となります」 そう言ってマザリーニ枢機卿が差し出した書類を受け取ったアンリエッタは。素早くその書面の中身に目を通すと末尾にサインをし、最後に王家の紋章を押印した。 そうして出来上がった公式書類を受け取ったマザリーニは、今度はフーケの前まで歩いて持っていき、それを彼女に手渡した。 手元の書類に視線を落とし、じっくりと確認するフーケ。全てに目を通し終わったとき、その口元が笑みが形作られていた。 「はい、これで結構です。これでわたくしはお望み通りに、知っていることを何でもお話し致しますわ」 書類を手にしたフーケが着席し、次はその右席に座るウルザの番となる。 杖を手にしたウルザが立ち上がろうとすると、それを制して先に立ち上がるものがあった。 アンリエッタ女王の左席、つまり順番からすれば王宮の関係者以外では最後に起立するはずのオールド・オスマンである。 「皆様、トリステイン魔法学院学院長オスマンです。 これからミスタ・ウルザが挨拶をするにあたり、皆様には事前にいくつか聞いておいて頂きたいことがございます。 それは彼が語ることは宣誓した通りに真実であり、また、その詳細についてはこの先の諮問によって明らかにされるものであるということであります。 どうか静粛に、発言は陛下の許可を頂いてからお願いいたします」 オスマンがアンリエッタとマザリーニの二人へと目配せをすると、最初からの取り決めであったのだろう、二人は頷いてこれを返した。 うやうやしくかしこまった口調のオールド・オスマン、ルイズはこの老人がこんなしゃべり方をするのを初めて耳にした。 オスマンの着席を見計らって、再びマザリーニがウルザに起立を促した。 それに従って、ウルザはゆっくり立ち上がると、深く頭を垂れて礼の姿勢を取った。 その仕草はエレオノールやフーケのそれとは全く違う、まるで機械のような完璧さと正確さを持った人間味の感じられない異質な姿であったが、慣れたルイズからすればむしろそれこそが彼の自然体であることが知れた。 そして口を開いたウルザは、自身の紹介と事実とを簡潔に口にした。 「私はウルザ。ミス・ヴァリエールに使い魔として召喚された、系統魔法ならざる魔法を識る者であります。 この場にはオールド・オスマンと王宮の招致を受けて立っております」 口調だけは丁寧に、けれどその声色は硬質かつ厳格に。 何もかも普段通りのウルザの言葉であった。 ルイズからすれば既に知っている事柄、何も驚くことはない。 しかし、そうではない者が多数いる円卓の間は、当然のことながらその言葉に大きくざわついた。 ハルケギニアにおいて系統魔法ではない魔法、そこから連想されるものは魔獣やエルフ達が扱う先住の魔法である。 事情を知らされぬ者達が、畏怖と恐怖の対象であるそれに帰結して、心穏やかにいられなかったのも無理もないことであった。 女王の御前という特別な場で、どの様な態度をとって良いか分からずに、ただ動揺だけが広がっていく。 そして、 騒雑を呼んだのがウルザの発言であったならば、 「皆さん、静粛にお願いします」 それを沈めたのはアンリエッタであった。 「先のオールド・オスマンの発言の通り、詳細は後の諮問によって明かされます。今は静粛にお願いします」 必要以上を口に出さないアンリエッタの制止に、参加者全員が一斉に口を閉じた。 それが女王としての才覚か、それとも女王という権威のなせる技かは当のアンリエッタにも分からなかったが、これ幸いとマザリーニは次の発言者に起立を促した。 「わ、私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」 そこからは順調な、というよりフーケ、ウルザと続いた流れからすると気が抜けたように感じる挨拶が続いた。 ルイズ、ギーシュ、モンモランシー、コルベールが順番に挨拶を済ませ、その場で見聞きしたものを証言するように呼ばれた旨を発言した。 唯一、オスマンだけは今回の騒動を諮問する側として呼ばれたことを話し、この後の諮問にあたってはオスマンが質問し、それに答える形で進められることを説明した。 「それでは質問します、ミズ・サウスゴータ。よろしいかな?」 力強いオスマンの声が、円卓の間に響く。 途中五分の休憩を挟んだ後、諮問会が再開された。 円卓を挟んで向かい合って起立しているのは一組の男女、オスマンとマチルダ。 両者はかつてこうして何度も学院の院長室で言葉を交えたことを思い出しながら挨拶を済ませ、本題へと入った。 「ミズ・サウスゴータ、事前に取らせて頂いた調書によれば、あなたは神聖アルビオン共和国樹立時からその中枢に近い立場にいたとのことですが、間違いはありませんな?」 「ええ、その通りです」 「そして亡命を希望し、ここトリステイン王国へ渡ったと。これもよろしいかな?」 「ええ、間違いありません」 あくまで自分は元アルビオン貴族マチルダ・オブ・サウスゴータであり、王家への恨みを晴らすためにレコンキスタに参加したが、やがてその思想について行けなくなり先の戦役の直前に逃亡、現在はトリステイン王国に亡命を希望している、これがフーケの立てた筋書であった。 オスマンは彼女の側からこの前提を崩すつもりが無いことを確認して、質問を続けることにした。 「それでは、神聖アルビオン共和国についていくつかお聞かせ願いたい。まず神聖皇帝、国の最高指導者の立場にあるものは、オリヴァー・クロムウェル司教である、このことに間違いはありませんかな?」 「いいえ、違いますわ」 「おお! 違うと申されますか!」 悠然と微笑んで答えるフーケ、それを聞いて大仰に驚くオスマン。 事情を知るルイズ達からすれば実に猿芝居この上ないのだが、エレオノールをはじめとする事情を知らぬ参加者達は二人のやりとりに引き込まれているようだった。 「はい。アルビオンは現在クロムウェル司教の統率下になく、実質的に国を支配しているのは別の者ですわ」 「ほほう! それではミズ・マチルダ、我が国を脅かしておるアルビオンの、その本当の支配者とはどの様な名なのかをお聞かせ願いたい」 そのオスマンの声を聞き、少し困ったような表情を見せるマチルダ。 左手を口元に持っていき、右手の人差し指でこつこつと机を叩く、そうして溜めを作ってから、彼女は何か恐ろしいことを口にしようとしているように唇をか細く震わせた。 フーケの本性を知るルイズからすれば、それは演出過剰気味な仕草であったのだが、その場に居合わせなかったコルベールやギーシュ、そもそも事情を知らぬモット伯爵などは何か感じ入るところがあったようである。 「男って単純ね」 誰にも聞こえないように小さく呟いたルイズの声に、隣に座るタバサだけが律儀に頷いていた。 「ミズ・サウスゴータ、お聞かせ願いたい」 「ええ、ええ! オールド・オスマン! わたくし決心がつきましたわ。やはりわたくしは彼の名をこの場で明らかにせねばなりません。例えどれほどに恐ろしいことであっても、この場でそれを明らかにすることこそが、始祖ブリミルが私に課した定めなのでありましょう!」 感極まったようにその名を告げようとするマチルダに、事情を知らぬ男達は引き込まれ、一方でルイズやアンリエッタは冷めた眼差しで彼女を見ていた。 円卓の上では、自動筆記のペンだけが二人のやりとりを記録している。 「彼の名前はジャン・ジャック・ド・ワルド! 元トリステイン魔法衛士隊隊長、ワルド子爵でございます!」 ワルド子爵、栄えある魔法衛士隊のグリフォン隊、その元隊長が裏切り者であったことは参加者のうちにも周知の事実として知らしめられていた。 だが、マチルダの口から出たところによれば、彼は裏切り者であるだけではなく、今やトリステインを滅ぼそうとしている侵略国アルビオンの支配者にのし上がっているのだという。 流石にこのことはアンリエッタも知らないことであったのか、驚きに手で口元を隠している。 そして更に大きく衝撃を受けていたのはエレオノールであった。 ルイズの婚約者であるワルド子爵のことを当然エレオノールは知っていた。 親同士が戯れに決めたことであっても、以前のルイズが彼にあこがれのような感情を抱いていたことをエレオノールも知ってはいたし、何よりも自分も知る人間が、このように大きな騒動の中心にいるとは思っていなかったのである。 泣き虫な妹を心配し、そちらを見やるエレオノール。 そしてこのとき、偶然にも目線を泳がせていたルイズと、エレオノールの視線が交差した。 けれど、ルイズの瞳にはエレオノールが想像していたような動揺の色はなかった。このことを一瞬怪訝に思ったエレオノールだったが、ルイズの方から視線を外した為、彼女自身もそれ以上を考えることはしなかった。 関係者達の様々な思惑が交錯する間も、オスマンとマチルダのやりとりは続いていた。 「ワルド子爵がどの様な手段を用いて、アルビオンを支配したのかは気になる部分ですが、そちらは後にまわして、今はお二人がどの様な関係かを先にお聞かせ願えますかな?」 「……わたくしとワルド子爵は、情を通わせた仲でありました……」 それからフーケが口にしたのは、よくぞこれほど次から次へと嘘が並べられると、ルイズが呆れかえるってしまうような内容であった。 フーケはまず、自分とワルドが恋仲であったことを話し、そして彼に利用され悪事を働いてしまったと涙混じりに告白した。 全ての罪はワルドにあり、自分は利用されただけの哀れな女、悲劇のヒロインであったことを訴えたのである。 彼女の言う『悪事』の中には学院で盗みを働こうとしたことなども含まれているのだろうが、それすらもワルドに利用されてのことだと言うのだろう。 これだけの嘘を並べて矛盾やよどみを感じさせないのは、盗賊や貴族より、むしろ役者に向いているのではないかと、ルイズは思わずにはいられなかった。 役者と政治家というのは本質の部分でよく似ているんじゃないかしら。 ―――ルイズ 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (24)女王の召集 行き交う人の群れ、群れ、群れ。群集と言う言葉こそが相応しい光景。 賑わう王都。 それもそのはず、今は国を挙げてのお祭り騒ぎの真っ最中なのである。 数日前の夜のことだ。王都の住民達はすべからく皆、あの月光に照らされた禍々しい浮遊大陸の異様を目撃した。 南方に軍が出払って守りが薄くなったところに、図ったかのようなアルビオン軍の来襲。 王都中に動揺が走り、一時はパニック直前にまで緊張感が高まったほどであった。 しかしそれは、始まりと同様に唐突な終焉を迎えた。 『始祖の光』と呼ばれている謎の光の発現で。 王都中の民達は空を呆然と見上げ、声を失った。 そうしてその光が収まり、夜の闇が再び世界を支配したときには浮遊大陸アルビオンの姿はまるで光に溶かされた霧のように掻き消えていたのだった。 夢まぼろしのような一夜が明けた翌日、国中に王宮からの触れが出された。 そこには始祖ブリミルの加護によりトリステイン王国は神聖アルビオン共和国を退けることに成功した事実と、始祖に指名されたアンリエッタ姫が女王として即位するということが宣言されていた。 また、同時にその触れには翌日、女王の戴冠式と、戦勝パレードが行われることが示されていた。 急な通達に急な祝祭であったが、城下の国民達は王宮の目論見通りに、アルビオンのことなど忘れて喜びに沸いた。 そうして開催されているお祭り騒ぎこそ、今ギーシュとモンモランシーの前で行われている、これまでに無い規模の大祝祭なのであった。 更に、明日の夜には宮廷での舞踏会も開かれることになっているらしい。 まさに上へ下への大騒ぎとはこのことである。 「それにしても、良かったのかしら?」 「ん?何がだい、モンモランシー」 色とりどりに飾られた出店、商人らしき姿の一団が大声を出して呼び込みを行っている。 街を歩く人々は老若男女、その姿は貧者、富豪、平民、貴族と様々だ。 ある者は着飾り、ある者は身分相応の格好をし、またあるものは客寄せの仮装をしている。 そんな人ごみの海を歩く二人の手には小さな旗が握られていた。 旗には百合をかたどったトリステイン王家の紋章が描かれている。 二人はパレードの主役であるアンリエッタを一目見ようと、大通りを目指して歩いているところだった。 同じことを考えているのか、周囲見渡せば同じように旗を持って歩いている者もちらほら見受けられる。 「ルイズのことよ。あのまま置いてきちゃって良かったのかしら」 「うーん。でもほら、積もる話もあるだろうからね。何より家族水入らず二人で話すのを邪魔しちゃ悪いじゃないか」 決してルイズの姉、エレオノールが怖かったので逃げだしたなどとは、口が裂けても言えない。 「そうかしら?」 「そうだよ。帰りにでも何かお土産を買っていってあげれば大丈夫さ」 ただでさえ騒がしく雑多であった人ごみが、ますますその度合いを増してきた。 パレードに近づいている証拠である。 そんな中を歩を進める二人の前を、大柄な男が横切ろうとした。 ギーシュは慌てて足を止めたが、モンモランシーはそのことに気づかずぶつかってしまった。 「きゃっ!」 当然の帰結として弾き飛ばされるモンモランシー。華奢な体がバランスを崩して、白い石畳に尻餅をついた。 「あっ!こら!待ちたまえっ!」 ギーシュが男を呼び止めようと声を上げたが男は立ち止まらず、そのうちその後ろ姿も人の海に消えてしまった。 「いたた……」 「全く酷い奴だ。ほらモンモランシー、掴まって」 転んだモンモランシーに差し伸べられるギーシュの手。 微笑みかけた彼の笑顔が眩しかった。 ギーシュはモンモランシーの手を優しく握ると、今度は力強く引き起した。 彼女は意外な力強さに驚きを覚えながら立ち上がり、その姿を見て「まるで物語の中の王子様とお姫様みたいだな」と思った。 そしてギーシュの顔を思わずじっと見入ってしまうモンモランシー。 しかしそれも一瞬のこと、すぐさま我に返った。 握ったままだった手を慌てて離し、耳まで真っ赤にさせながら手をパタパタと動かして髪や服を整えた。 自分でも明らかにおかしい挙動をしているのはわかっているのだが、ギーシュのその笑顔や仕草は、思わぬ破壊力で心の城壁を打ち抜いてしまいそうだったのだ。 ありていに言えば――ちょっとときめいてしまったのだ。 (ば、ばばばば!馬鹿じゃないの!?相手はあのギーシュよっ!?ただの幼馴染よ!?) 馬鹿な考えと切って捨てようとする刹那、唐突に思い出されるウェザーライトⅡの艦橋。男らしく舵を握ったギーシュの引き締まった横顔。 そしてその後、自分は顔を近づけギーシュの唇にキ (あ、あああああああああああああぁぁぁぁ!!??) 危うく掘り起こしかけた記憶を大慌てで埋める。 両手で顔を覆い、そのことは考えないようにした。 (確かに、盛り上がっちゃってそういう気持ちになったこともあったけど!ノーカウント!違うわ、あれは気の迷いよ!) 伏せていた顔を上げて、ちらりとギーシュを見る。 優しく微笑むギーシュ。その姿にモンモランシーの心臓がとくんっ、と鳴った。 (ぁぁぁああああ!?私ってば!私ってば!?) もしも目の前にベットがあったら全力で潜り込んで手足を振り回していたに違いなかった。 真っ赤になったり真っ青になったり、そしてまた真っ赤になったりするモンモランシーを暖かい目で見守るギーシュ。 まあ、彼にとっては転んだ拍子にちらりと見えた、彼女の可愛らしい下着のことを思い出してニヤニヤしていただけだったのだが。 一方その頃、コルベールはルイズの部屋へと向かっていた。 弱った体のまま、たいした休みも取らずに作業に没頭していたことで、その目元にははっきりとくまができていた。 普段ならしっかりしている足取りもどこかおぼつかない。 そんな状態でもコルベールは生徒の顔を一目見ようと足を動かしているのだった。 愛する生徒の元気な顔を見るまでは一息つけない、それがこの二十年続けてきた『教師』としてのコルベールの生き方なのだ。 コルベールはいつの間にやら目的の部屋を通り過ぎていたことに気づいて慌てて引き返し、ルイズの部屋の前に立った。 部屋の中からは二人の女性の声が聞こえた。 一人は何を言っているのか聞き取れないが、もう一人は「あいだっ!」とか「やめて姉さまっ!」と連呼しているようであった。 「……ふむ」 賑やかな雰囲気に立ち入ることに一瞬の躊躇いを覚えたものの、コルベールはおもむろにドアを三回ノックした。 「あいだだっ!だだだっ!」 一度は解放されたものの、また地雷を踏んだルイズがエレオノールに頬を抓られていると、来客を伝えるコンコンコンというノック音が響いた。 「ほら、ちびルイズ。お客様よ、ヴァリエール家の子女らしく、礼儀正しくお迎えなさい」 ルイズはエレオノールの方を恨みがましい目で見た後、扉の外にいる人物に来訪を歓迎する言葉を伝えた。 コルベールが入室すると、大貴族が使うほど豪華でもないものの、小奇麗に趣味良く整えられた部屋に二人の女性がいた。 その片方、ベットから身を起こしている桃色のブロンドの少女の姿を視界に認めると、コルベールは顔を綻ばせた。 「やあ、ミス・ヴァリエール。加減はどうかな?」 「ミスタ・コルベール!」 その姿を見て興奮するルイズを、エレオノールが肩を掴んで抑えた。 「ミスタ・ウルザから無事とは聞いていましたが、お元気……」 そうですね、と続けようとしたルイズの言葉が詰まる。 目の下にはくま、顔色は土気色、心持ち立っている姿もふらふらしているように見える。 その姿がどう見ても元気そう、とは言いがたかったのだ。 「ご、ご無事で何よりです」 「ははは、今まで作業をしていてね。この後はゆっくりと休ませてもらおうと思っているよ」 休めるかは分からないが、とは続けなかった。 「ごきげんよう、コルベール先生」 「やあ、ミス・ヴァリエール。君もお変わりない様子で」 胸が?という言葉が脳裏をよぎるルイズ。 「ええ、コルベール先生は……大分変わられましたね」 頭が?ととっさに連想してしまうルイズ。 「エレオノール姉さま。姉さまはミスタ・コルベールと顔見知りでしたの?」 「ええ、そうよ。こうして顔を合わせるのは久しぶりですけどね」 「いやいや、昔から変わらぬ美しさですぞ」 にこやかな談笑と思いきや、エレオノールは挨拶もそこそこに、鋭く話の核心を突いた。 「それで、コルベール先生。うちの不肖の妹がどうしてあのフネに乗っていたのか、ご説明していただけませんか?」 虚無の使い魔こと、プレインズ・ウォーカーウルザが部屋に入ってきたのは、コルベールがエレオノールの執拗な追求に音を上げかけたそのときだった。 「ああ、ミスタ・ウルザ!良いところに来て下さいました」 先客を気にも留めず、ベッドの横に置かれた椅子に座ろうとしたウルザであったが、コルベールの懇願にも似た声に動きを止めた。 「何ごとかな、ミスタ・コルベール」 「いえ、大した用件ではないのですが……」 その言葉を聞いたエレオノールの目が釣り上がる。 「大したことでは無いとはどういうことですか。うちのルイズが戦争に参加することが大したことが無いと、先生は仰りたいのですか?」 「ああ、いえ、そう言うことでは無く……」 エレオノールに問い詰められるコルベール。先ほどからずっとこの調子である。 さしものコルベールとしても、そろそろ誰かに助け舟を出してもらいたいと思っていた頃合だった。 「ふむ……そちらのお嬢さんは、ミス・ルイズのご家族といったところかな?」 そういったウルザは少し顔を動かして、色眼鏡越しにエレオノールを見やった。 一方、ノックもせずにいきなり入ってきた白髪白髭色眼鏡に見慣れないローブを羽織ったこの老メイジに、エレオノールは困惑の表情を浮かべる。 「ええ。私はこの子の姉でヴァリエール家の長女、エレオノール・ド・ラ・ヴァリエールよ。そういうあなたはどこのどなた様かしら?見たところメイジのようですけれど……」 言葉だけは丁寧に、眼鏡越しの視線は不審者を見るような厳しい目つきでエレオノールが言った。 「私の名はウルザ。こことは陸続きではない『遠い地』より来たる者だ。ミス・ルイズに使い魔として召喚されここにいる」 「……使い魔?」 呆れたような、どこか諦めた表情でエレオノールはベットの上のルイズを見下ろした。 「ルイズ、本当なの?」 「ええっと……その、本当です」 おずおずと答えるルイズ。それを聞いたエレオノールは疲れたように、自分のこめかみをぐりぐりと押して溜息をついた。 「魔法からっきしのあなたが召喚の儀に成功したと言うのは喜ばしい知らせだけど……人間の、しかもメイジの方を召喚するというのは、流石ちびルイズ、一味も二味も違うわね」 「うう……」 ここ数ヶ月、人間的にある程度の成長を遂げているルイズであったが、この姉と母親にだけは頭が上がる気がしなかった。 「とんだご無礼を、わたくしの方からもお詫びいたしますわ。……ええと、ミスタ・ウルザとお呼びすればよろしいのかしら」 「それで結構だ。お嬢さんは……ミス・ヴァリエールでよろしいのかな?」 『お嬢さん』と呼ばれたエレオノール、ルイズはその顔色を恐る恐る窺った。 しかし、激怒しているかに思われたエレオノールは恥ずかしそうにうっすら頬を赤らめているだけだった。 「それではこの子との区別がつきませんわ。エレオノールで結構です」 「ふむ……」 言われたウルザが手を顎に当てて、髭を撫でる。 エレオノールはウルザが手を動かしているその口元から胸にかけ手をじっと見ていた。 「ではミス・エレオノールとお呼びしよう。よろしいかな?」 「ええ。私はそれで構いませんわ」 ルイズとしては姉の様子がどこかおかしい様に感じられたのだが、口出しするのははばかられた。 「それで、ミス・エレオノール。用件とは何ですかな?」 ウルザの質問に、素早くコルベールが声をあげた。 「彼女はミス・ルイズが先の戦いの場に居合わせたことの説明を求めているのです。 ミス・エレオノール、こちらのミスタ・ウルザは先の戦いにも参加した『例の船』の関係者です」 すかさず要点だけを伝え、自分の役目は終わったとルイズの横、ウルザが立っているのと逆の方へと移動するコルベール。 彼もルイズと同様にこのアカデミーの鬼才には苦手意識があるようだった。 「ミスタ・コルベールが仰った通り、私はここにこの子がどうして戦場にいたのかを問い質しに来たのですわ。 もしも何かの事故、手違いなどであのフネに乗ったということでしたら、わたくしはこの子をすぐに屋敷にまで連れ帰るよう、父に言いつけられております」 「姉さまっ!?」 それは困る。 自分にどれだけの時間が残されているか分からない。 それをウルザのため、この世界の為に使おうと決めたのだ。 屋敷の中で閉じ込められている余裕は、自分には無いのだ。 そういったルイズの葛藤や決意を無視して、エレオノールは言い放つ。 「お黙りなさい。大体、魔法も使えないあなたが戦場で一体何の役に立つと言うの」 うっ、と言葉に詰まるルイズ。 ルイズは未だ誰にも自分が虚無の系統に目覚めたことを他人に明かしたことは無いのだ。 コルベールやオスマンは、早い段階からウルザの口からそのことが説明されていた為、ルイズ自身が誰かに語る機会は無かったのである。 ゼロのルイズと呼ばれ馬鹿にされ続けてきたルイズだったが、自身が虚無の系統であることを知って以来、以前ほど風評が気になることは無くなっていた。 また、それ以上に自分が虚無の系統であることを吹聴してまわることに強い抵抗を感じていた。 それは『虚無』という選ばれた者の力に、潜在的に恐怖を感じていたかもしれなかった。 暫く顎鬚を撫でていたウルザが手を止めて、口を開いた。 「それは少々困る。彼女は今や『ウェザーライト計画』の要とも言える存在、ミス・ルイズ抜きでこのトリステインがこの先の戦いを続けることは難しいだろう」 いきなり突拍子も無いことを言われて、鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔を見せるエレオノール。 ルイズは姉がそんな顔をするのをいつ振りに見ただろうかと思案したが、記憶に霞がかかって思い出すことはできなかった。 妹の視線に気づき、咳払いを一つ。これで調子を整えたエレオノールは、勢い良くウルザに食って掛かった。 「この子が要?魔法も使えない子がどうして王宮の計画らしい『ウェザーライト計画』とやらの要になると言うんですの? はっきりとここで説明をしてください」 説明をするまではてこでも動かないと、全身から漂わせる気配が語っていた。 「ミス・ルイズ、君は君の口から自分の魔法について説明するべきだ」 「……え?」 てっきりウルザが説明するとばかり思っていたルイズが、思わず声を漏らす。 「ちびルイズ。あなたもしかして自分の系統に目覚めたの?」 エレオノールにそう問われてルイズはすぐさま答えることができない。 口にして、何かが変わってしまうのが怖かった。 だが、それ以上に家族である姉に、嘘をつくのが嫌だった。 少しだけ躊躇った後、ルイズはその口からはっきりとエレオノールに自分が何に目覚めたのかを伝える覚悟を決めた。 「姉さま。私の系統は……」 前へ進もう、臆せず、止まらず、前を見て。 迷っている時間は無い、自分に残された時間は少ないのだから。 「虚無です」 それを聞いたエレオノールが、何かの冗談だろうとコルベールとウルザの顔を交互に巡らせた。 そして、二人の真剣な表情に冗談ではないらしいと読み取ると、エレオノールは本日二度目の唖然とした顔を見せた。 「虚無?虚無ですって?そんなもの伝説の中にあるだけじゃない。アカデミーでだって虚無の系統の実在は報告されていないわ!」 声を荒げるエレオノール。しかし、ルイズの表情は真剣そのもので、自分が見たことも無いような『一人前』の顔をしていた。 いつも泣いていたルイズ、自分とカトレアの後ろばかりを歩いていたルイズ。 そのルイズがこんな顔をするようになっていたことに、エレオノールは姉として大きな驚きを感じた。 そのとき、またドアがコンコンとノックされた。 それを聞いて話は終わったとばかりに椅子に腰掛けるウルザ、コルベールは後のことが気になりながらも部屋を退出する旨をルイズに伝える。 ルイズはエレオノールのことが気になりながらも、ドアの外に待つ来客に声をかけて、入ってくるように伝えた。 そうして、ガチャリと音を立てて入ってきたのは歳若い魔法衛士隊の制服を着た騎士だった。 ルイズにとって魔法衛士隊の知り合いと言えば、元グリフォン隊の隊長であった彼のほかに無い。 見覚えの無い顔にきょとんとした顔をするルイズに、騎士は背筋を伸ばし、深く敬礼をした。 「ミス・ルイズ、ミスタ・ウルザ。お二方に手紙を渡すように預かってまいりました」 そういいながら騎士はきびきびとした動作で巻物を差し出す。 それを受け取ったルイズは、中を見て差出人を確認しようとしたが、そこで手が止まる。 そこにある封蝋に押された花押は、王家の紋章。 「!? これってまさか!?」 ルイズが上擦った声を上げるが、青年はきびきびとした声はそのままに、事務的な口調で返答した。 「自分は何も仰せつかっておりません。差出人の確認は中を見れば分かるそうであります」 直立不動の姿勢を崩さない青年。何かを言い含められているのか、その顔は緊張して目線は何も無い宙のただ一点を見ているばかりだった。 「……分かったわ」 青年が退室した後も、無言のまま手紙と封蝋の印章を見つめ続けるルイズ。 退出するつもりだったコルベールも、先ほどまで取り乱していたエレオノールもまた、無言。 ウルザはそれが何であるのか分かっているのか、興味なさそうに備え付けの机の引き出しから本を取り出して、何かを書き込み始めた。 ルイズは恐る恐るといった手つきで手紙を開封した。 手紙の中身、アンリエッタの筆跡で書かれていたそれは、王宮にて明日開かれる予定である軍議への出頭要請だった。 国を守る為、戦ってもらわねばなりません。 ―――トリステインの女王 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む